CONTACT HIGH ZINE|インディペンデントマガジン「CONTACT HIGH ZINE」の第4弾ローンチ。私的な記憶をナラティブに他者の物語と溶け合わせ、パラレルワールドに向かう
Photo: ©︎ CONTACT HIGH ZINE
スタイリスト、島田辰哉が中心となり、2015年9月からゲリラ的に始まったインディペンデントマガジン「CONTACT HIGH ZINE」。ファッションだけではなく、アンダーグラウンドカルチャーやアウトサイダーアート、ゴシックを織り交ぜた独特な世界観は、多領域に知れ渡っており、第3弾から5年の月日を経て待望の新作を発行。タイトルは「INTO THE PARALLEL」。9月29日のローンチを記念して、9月29日から10月3日までDOMICILA TOKYOにてポップアップイベントを開催する。初日のローンチパーティーでは、制作携わったクリエイターやアーチストを始め、誌面に深い関わりを持つ「ルヌルヌ」のオブジェやVJDRによるVJやPSYCHOGEMとSIMAによるライブパフォーマンスが披露される。
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異世界に思いをはせることで、それを否定し、体験に寄り添わず人間本来の姿を描く
この4th ISSUEは、2018年から2020年にかけて島田自身に起こった度重なる悪夢のような日々を過去のものとした体験を葬りたいという切実な思いから始まった。そこで考えたのは、過去に戻る方法と別の選択をした時の世界線。また、そのパラレルワールドから届いた自分宛のメッセージを解釈し、走馬灯のように蘇る記憶の断片を基盤に、その時の思いや出来事が翻案されている。配信されたステートメントには「3rd issueまでは自らをダークサイドに置いておくことで、そのムードを生み出すことができると信じ込んでいました。私はその錯覚から覚め、それが自らの本質ではなく、一つの要素に過ぎないことに気づきました」と記されている。そこから創作に向かうドライブ感と濃密な作り込みは彼の本質であり、表層的な体験に頼らない真の姿ともいえる。
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また、ステートメントの続きにはこうも書かれている。「パラレルワールドの分岐点が作る別の未来を唯一否定的にするのは、現実の存在です。この過去と未来の分岐点に存在する現実だけが、どうしても戻りたいと思ったあのパラレルワールドを否定してくれます」。人間誰しもが考えたことがあるだろう、今この瞬間に存在する現実から乖離したパラレルワールド。過去の選択は別の選択をした時に、どういう世界が起きていたのだろうか。それを紐付けていくと今とはまったく異なる世界が広がっている。その世界を否定するのは過去の選択をして形成された今という現実。その現実を見つめることは時に自分自身にとってポジティブとはいえない。だが、この現実と向き合うことでパラレルワールドを否定し、それを一つの時間軸で描くことで長い旅路のように、鎮魂歌を唱え続けている。そう踏まえると濃密で毒っ気の強い世界観も人間らしさや他者との親和性が垣間見えてくる。