ESPACE LOUIS VUITTON|エスパス ルイ・ヴィトン大阪にてシモン・アンタイの回顧展「Folding」を開催。抽象から具象へ、具象から抽象へ。独自の流儀によって行き交う佇まい
Photo: ©Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
エスパス ルイ・ヴィトン大阪にて、2023年9月28日よりハンガリーの抽象画家、シモン・アンタイの回顧展「Folding」が開催される。この展覧会は、重要な20世紀の作品の紹介と現代美術に特化した芸術機関、フォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵コレクションから選りすぐりの作品を展示する「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環として行なわれる。アンタイはハンガリーのビアトルバギーで生まれ、ブタベスト美術学校で学んだ後、1949年にパリに移住し、シュルレアリスム全盛期の潮流に身を投じつつも、独自の発想を解放し、コラージュの拡大解釈に至った。その後1960年代にはプリアージュ(折り畳み)を生み出すことになる。
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潮流に適合し、我流を確立。更に、多様化させ類稀に
キャンバスを折り畳んだり、くしゃくしゃにしたりする手法を用いてアンタイは、空白を埋めつつ、開いたときに絵具が付く部分とそうでない部分があるように調整していく。自己生成する絵画は、神の子の顕現をなぞるものとなり、「Le mur(壁)」または「Manteaux de la Vierge(聖母マリアのマント)」として知られる最初期の折り畳み作品のシリーズは、この神学的側面を特に強調している。
Photo: ©Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
他方、「Étude(習作)」シリーズは、「Manteaux de la Vierge(聖母マリアのマント)」とは異なり、プリアージュの手法を更に多様化させる。折り込まれて色がつかなかった部分は敢えて空白にしておくという画面構成が見られ、色彩は単色で模様の躍動感も顕著。
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会場で際立つ「Tabulas(タビュラ)」も「Étude(習作)」同様、プリアージュの手法を発展させた作品。「Tabulas(タビュラ)」2つ目のシリーズの後、アンタイは引退(実際はその後も絵画制作を続けている)していることからも、創作の集大成であったに違いない。
Photo: ©Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
エスパス ルイ・ヴィトン大阪のために特別に企画された本展は、パリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンにて2022年に開催された「シモン・アンタイ生誕100周年記念展」と2019年の「シャルロット・ペリアンの新たな世界」展における巨大な「Tabulas(タビュラ)」の展示の続編にあたる。1960年代初頭の作品から1980年代のものまで、すべてフォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵コレクションより、多彩な作品シリーズを世界初公開となっている。