Fondazione Prada|田名網敬一が「屏風」の魔(間)力に着目した「PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI – パラヴェンティ:田名網敬一」がプラダ 青山店にて開催

Fondazione Prada|「PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI – パラヴェンティ:田名網敬一」。文脈を据え置き、相反する概念の間を射抜く、田名網敬一の創意

展示風景より、

「プラダ」が11月3日から2024年1月29日まで、プラダ財団の企画による展覧会「PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI – パラヴェンティ:田名網敬一」をプラダ青山店で開催。本展覧会は米国の美術史家兼キュレーター、ニコラス・カリナンがキュレーションを担当し、ミラノのプラダ財団でのグループ展「Paraventi:Folding Screens from the 17th to 21st Centuries(パラヴェンティ:17世紀から21世紀の屏風)」(10月26日〜2024年2月22日)との同時期開催となっている。

本展の大きなテーマとなるのは「屏風」。絵画的であり、彫刻的。美術品であり、調度品。実用的であり、虚飾的。まだある。道具と表現、装飾と機能、建築と演劇。一見、相反する両軸を同時に思い浮かせる。プラダ財団は、ミラノ、上海、東京を舞台に3つの展覧会で「Paraventi」、「屏風」の歴史が取り巻く、我々に対するある種の問いかけ、逆説に対する考察的なアプローチを図っているともいえる。

展示風景より、式部輝忠 / 梅竹叭々鳥図屏風 / 室町時代後期、六曲一隻 / Courtesy of London Gallery,Tokyo

屏風の歴史は起源である周王朝後期の中国まで遡ることができる。やがて日本に伝来し、その後西洋にも渡って、特徴ごとに枝分かれしていく。バロック時代には、劇場やオペラの小道具になり、文化人や芸術家に留まらず、建築やデザイナーなどモダンな作り手たちまでもが着手していくようになる。実用的な機能から芸術的な表現に転換され、時に黒子のように暗躍し、時に美術品として陽の目を浴びる。そのように隠されたり、明らかにされたり、交わったり、離れたり、あらゆる領域への文化移行するその様さえも歴史として刻まれている。そのような文脈があったとしても屏風の象徴とされるのが、境目の対象物、または境界そのもの、即ち「間」とされている。それは交差とも捉えることもできるし、誰も近づくことができないとも捉えることができる。

このような背景から「PARAVENTI」と題されたプロジェクトが生まれた。それは、現在に至るまであらゆるアーチストの作品を通して新たな歴史の一ページを綴っている。

特に、プラダロンツァイ(上海)とプラダ 青山(東京)での2つの展覧会は屏風をスクリーンと見做し、層状に配置されたり、デジタル体験として変換されるなど、その影響についてウィットに富んでいる。

1960年代以降の日本を代表するポップアーチスト、田名網敬一は、ミラノでの展覧会を経て屏風のコンセプトを更にアップデートさせた新たなアート作品を生み出した。

展示風景より、田名網敬一 / 記憶は嘘をつく / 2023 / Courtesy of NANZUKA,Tokyo

田名網敬一は1936年東京生まれ。アーチストとしてだけではなく、グラフィックデザインやイラストレーションなど、媒体や領域に左右されることない自由な表現を主としており、1960年代から半世紀以上にわたって、日本のアートシーンを牽引し続ける存在。本展で田名網は、12世紀の日本の仏教寺院、歌舞伎の小道具、戦後に流行した紙芝居の小道具としての屏風に言及しながら、屏風の文脈や物語を独自の路線で探求している。屏風のように展開するビデオインスタレーション、コラージュ、ビデオマッピングを使用した彫刻など「畳み込む」という概念を強調すると共に紙芝居の伝統を想起させることで展示空間に流動性を描出。間切りとして機能する家具でありながら空間を非日常に変容させる表現でもある多面的な概念を行き来することができる。しかも田名網はコラージュによって、我流の遊び心を加えている。

展示風景より、田名網敬一 / 赤い陰影 / 2021 / Courtesy of NANZUKA,Tokyo

展示風景より、田名網敬一 / 人間編成の夢(ブロンズ) / 2020 / Courtesy of NANZUKA,Tokyo

それに対して田名網は、「私にとって、コラージュは最高に楽しい創造の遊びです。コラージュを作る時は、子供の頃遊んでいた時と同じように頭が空っぽになります。決まった大筋や計画といったはものは一切ありません。好きな画像を自由に切り貼りし、これまで想像もつかなかった作品に命を与えるのです。そのため、自分の人生そのものが作品に凝縮していると感じます。今思えば、こうしてコラージュ作品を作れるのも、若い頃から雑誌向けのアートやデザインを作るのにコラージュ技法を使ってきたお陰です」と語る。本展の作品は白黒のコラージュのモックアップから始まったということで、その時点で軸は定まっていただろう。非日常を日常的に描く習慣がデータ化され、縮小印刷し、コラージュされる。その後、そのコラージュはパソコン上で彩られ、デジタルプリントを施して最後に少し手を加える。技術と手仕事を織り成し、何よりも楽しんで想像力を搔き上げることを忘れない。また、屏風固有の「間」に関して田名網は、古来から伝わるすき間やすき、感覚を意だけではなく、隠したり秘密にしなければならない場所や存在との間に教会を作るために多くの意味を含んだ概念に対しても、自身が歩んできたタブーとも共に生きることを主題にした作家性と重ね、文脈として成り立っていることも暗示させている。

展示風景より、田名網敬一 / 光の旅路 / 2023 / Courtesy of NANZUKA,Tokyo

11月2日の内覧会では、俳優やモデル、ミュージシャンや文化人といった多くのセレブリティが来場。会場では「プラダ」のブランドアンバサダーを務める俳優の坂口健太郎による音声ガイドにアクセスできるQRコードが配布され、田名網本人の解説とともに、作品を楽しむことができる。

PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI – パラヴェンティ:田名網 敬一 会期: 11月3日〜24年1月29日 会場: プラダ 青山店5階 住所: 東京都港区南青山5-2-6 開館時間: プラダ 青山店に準ずる 休館日: プラダ 青山店に準ずる 料金: 無料

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