EVENT|菅谷晋一による個展「Shinichi Sugaya Solo Exhibition Vol.2」をレポート

音楽を視覚で捉え、ビジュアルとして表現する菅谷晋一氏の個展「Shinichi Sugaya Solo Exhibition Vol.2」が、神保町のKOMIYAMA TOKYO Gにて、2024年1月19日(金)から28日(日)まで開催中。今回はオープン前日、作品が設置されたばかりのギャラリーに伺った際の様子をレポートする。菅谷氏は、ロックバンドのザ・クロマニヨンズをはじめ、数々のミュージシャンのレコードジャケットを手がけるアーティスト。今回の個展では約20点の新作に加え、「ザ・クロマニヨンズ」のミュージックビジュアルとして制作した立体作品や絵画が展示される。レコードジャケットを制作する際には、考えすぎたり迷いが生まれたりしないよう、楽曲は基本的に一度しか聴かないという菅谷氏。そこからインスピレーションを得て作り出される作品群は、見る者を独自の世界へといざなう。

会場風景

オフィシャルマスコットキャラクター「高橋ヨシオ」

会場に入るとすぐ、ザ・クロマニヨンズのオフィシャルマスコットキャラクターがプリントされたバルーン状の置物が目に飛び込んできた。UMA(未確認動物)である「高橋ヨシオ」はザ・クロマニヨンズを体現するものであり、バンドファンなら誰しもが知っている有名なキャラクターだ。入り口すぐ右側に展示されている額装された肖像画(高橋ヨシオ)は、ラフな筆使いで描かれ、どっしりと構えた出立ちと、まっすぐ見ているようで斜視な眼差しで独特な雰囲気を醸し出していた。菅谷氏に作品について尋ねたところ、これはなんと20分ほどで描かれたものだという。「構えずに描いたからこそ、力強い線を表現することができた。」と菅谷氏は語る。

壁に沿って進んだ先にあるのは、エルヴィス・プレスリーの故郷で、ブルース、ソウル、ロックンロール発祥の地・テネシー州のメンフィスをインスピレーションして描かれたアクリル画。混ざり合ったような色彩は様々なジャンルの音楽がミックスされ、それぞれの音が鳴り響いているような印象だ。

その横には、ステンドグラスのような輝きを見せる美しい作品。これはガラスではなく、アクリル板に描かれたもの。光が当たることによって、その部分は色が明るく移り変わり、作品の鮮やかさを増していた。会場ではライトが当てられていたが、実際に窓際に置いて太陽の光を浴びたらどのような光彩を放つのかと想像が膨らむ。

2020年12月にリリースされたザ・クロマニヨンズの14thアルバム『MUD SHAKES』のために制作されたビジュアル。「MUD(泥)SHAKES(揺れる)」というタイトルから泥に潜み、震わせるという『泥蛇』をイメージし、このビジュアルが完成した」という。また会場内でゴールドに輝くオブジェの数々は、この蛇を擬人化したもの。ザ・クロマニヨンズの音楽性を表現している。

落ち着いた赤の背景に、マスコットキャラクターである「高橋ヨシオ」が佇む肖像画。これはザ・クロマニヨンズが2012年に行ったライブを収録したDVD「ザ・クロマニヨンズ TOUR ACE ROCKER 2012」の表紙で使用されたビジュアルだ。過去にリリースされたシングルやアルバムのCDジャケットに登場したモチーフを「高橋ヨシオ」が身につけている。頭には、6thアルバム「ACE ROCKER」で使われたヘッドピース、手に持っているお守りは11thシングル「突撃ロック」のビジュアルに登場したものだ。

奥のスペースには、約20点の新作のキャンバス作品が並べられていた。淡い色の背景に黒のインクで描かれたこのシリーズは、「BUTTERFLY AND FLOWERS」(蝶と花々)や「SHOE AND CAT」(靴と猫)など、菅谷氏が考える「何気ない幸せな日常」を、黒猫をモチーフにしたオブジェクト作品「The Cat」の視点で切り取った。

「The Cat」

不均一な線は、アクリルの墨を使って割り箸ペンで描かれている。「筆だと線がきれいに描けてしまう。割り箸ペンで描くことによって、表現力のある線を出すことができた。またすべて黒で描いたのは、見る人によって自由に色を想像できるようにしたかったから」と菅谷氏。

「BUTTERFLY AND FLOWERS」

「SHOE AND CAT」

「SNOW」

「APPLE AND TWO INKSPOTS」

今回の展示では、ザ・クロマニヨンズのために制作されたアートワークの数々と、割り箸ペンを使い、ユニークな手法で制作された新作キャンバス画シリーズを堪能することができた。個展は1月28日(日)まで開催中。

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新作キャンバス画の前で微笑む菅谷晋一氏

菅谷晋一 プロフィール:
ロックバンド「ザ・クロマニヨンズ」や「OKAMOTO’S」などのレコードジャケットを手がける他、8ミリや16ミリフィルムの映像製作も行う。ビジュアルに用いる絵画、彫刻などを自ら製作し、撮影、レイアウトまで一人で担うストイックで仕掛けに富んだ創作は、ミュージシャンからの信頼も厚い。KOMIYAMA TOKYO Gでは、その世界観をさらに追求したプライベートなアート作品を展開する。

「Shinichi Sugaya Solo Exhibition Vol.2」 
会期:2024年1月19日(金)〜1月28日(日) ※23日(火)、24日(水)休廊
会場:KOMIYAMA TOKYO G
住所:東京都千代田区神田小川町 3-20-4 第2龍名館ビル 1F D
時間:12:00〜18:30 ※日曜日 12:00〜17:30

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