今後の活躍が期待できる若手作家を紹介する企画展シリーズ「NANJO SELECTION」の第5弾として、友沢こたおの個展「Réflexion」が東京・目黒区にあるアートギャラリーN&A Art SITEにて開催中。今回は実際に会場を訪れた際の様子をレポートする。
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スライム状の物質を被った独創的な人物画で知られ、すでに評価され活躍の場を広げている友沢こたお。今回は彼女が東京藝術大学大学院 美術研究科を修了後、初の個展となる。その門出を祝うかのように、会場はたくさんの人で賑わっていた。
ガラス張りの入り口からは、ずらりと並ぶ作品が目に入った。そこには友沢自らを描いた肖像画のほか、赤ちゃんの人形をモチーフとしたものがある。その顔面を覆うスライムの質感はとてもリアルで、遠目に見る限りはそれが絵画だと気づかないかもしれない。
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単にスライムといっても、作品の中には様々な“テクスチャー”のスライムがある。もちろん絵画なので本当のテクスチャーを手にとって確かめられるわけではないのだが、スライムの色や光沢、垂れ具合は作品ごとに異なっているいて、その違いを見て感じ取れる。
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透明なスライムは光の屈折や陰影が美しく表現されている。これが油彩作品であるということを忘れてしまうほど瑞々しい。重なり合ったスライムは厚ぼったく顔を覆い、観る者に息苦しさすら感じさせる。
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作家ステートメント
スライムが目、鼻、口の粘膜をひんやりと塞ぎ、時間がゆっくりとミクロに分解されていくのを皮膚で感じる。
真空の静寂の中、”今”は常に揺れ動き、伸び縮みし、分裂し、回転し、貫いたりしてくる。
光が散らばる。それに私はしがみつこうとしている。
――友沢こたお
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また今回の展示では、友沢の新しい試みとなる”Reflection”シリーズが初公開されている。これまでの作風とは少し異なるシリーズで、液体の中に映る物体が光の屈折によって歪んだり、混ざり合ったりしているように見える。
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併せて、過去に油絵作品のモチーフとしても登場していた、スライムを被ったような赤ちゃんの人形が今回は立体作品となって登場。2体が静かにそこに佇んでいる図はなんとも不思議で、独特な世界観を醸し出している。
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一度見たら忘れられないような、インパクトのある作品の数々。友沢の創り出す「不気味で、不思議で、明るくポップ」な世界を会場で体感して欲しい。
NANJO SELECTION vol. 5 友沢こたお 個展「Réflexion」
会期:2024年8月30日(金)〜9月28日(土) ※日・月・祝 休み
会場:N&A Art SITE
住所:東京都目黒区上目黒1-11-6
時間:12:00〜17:00
WEB:https://nanjo.com/nanjoselection_vol5-kotao_tomozawa/