ACA|3名の作家によるアートインスタレーションが日比谷公園で開催中
五感を使って体験できるアートインスタレーション「Playground Becomes Dark Slowly」が、日比谷公園にて5月12日(日)まで開催中。今回は展示作品とともに、そこに込められたアーティストの想いを紹介する。
「公園という都市の隙間の中で変化していく日の光を感じながら、自然への想像力を駆り立 てること」をコンセプトに、永山祐子、大巻伸嗣、細井美裕ら3名のアーティストによるアート作品を展示するこのインスタレーション。日中は永山祐子の「はなのハンモック」を中心としたプレイグラウンド、夜は光を放つ大巻伸嗣の「Gravity and Grace」、細井美裕がサウンドスケープの視点から日比谷公園の音を取集し、再構築した「余白史」など、 一日を通して公園での新たなアート体験を楽しめる内容となっている。キュレーターは、数々の美術館での勤務経験を持ち、現在は株式会社NYAW代表取締役の山峰潤也が務める。
永山祐子による「はなのハンモック」
「普段はお花畑を見て素敵だなと思っても、その上に寝っ転がることはできないのですが、こういうハンモックがあればその上に寝っ転がるような体験ができるのではないかと思いました。」と語るのは、建築家の永山祐子。今回は花畑を真上から見渡せるハンモックの作品を制作した。
公園を訪れる誰もが楽しむことができるハンモック。これは以前、別のイベントで使用されたもので、元々は魚網をリユースしたものだという。
「海ごみの問題とか、自然環境とか、気候変動が私たちの身近な問題として迫ってきてると思うんですけれども、そういったものを教科書的に伝えるのではなくて、例えば子供が遊びを通して、実はこのハンモックは魚網を再生して作ったものなんだよっていう裏のストーリーにまで段々とこう興味を持ってもらえるといいなと思っています。」
大巻伸嗣による「Gravity and Grace」
“存在”とは何かをテーマに制作活動を展開するアーティスト、大巻伸嗣が手がけた「Gravity and Grace」は、昼はひっそりとそこに佇み、夜は光を放って公園内で一際存在感を増す。この作品には、東日本大震災で発生した様々な問題に対する想いが込められている。
「元々は震災の後の原子炉の問題で、私たちが日常に関わらざるを得ないエネルギーの問題とか、社会における自分たちの見えない重力とその音調をたらしめるものは何だろうという問いを、震災以降の私たちの日常の中で問うために作った作品だったんです。」
昨年、国立新美術館で大規模な展覧会を開催した大巻。屋外での開催となる今回のインスタレーションでは、非日常的な空間である美術館での展示とは違った可能性を感じているという。
「公園という屋外の日常的な場所に、非日常的なアートの作品が関わったら、どんな空間が生まれるだろうか。もしくは、非日常的なアートが美術館を出てこの日常空間に立ち現れた時に、それはアートになるのか。何かその問いが生まれるのか、またはその関わりがどういうものを生み出していくのかという挑戦が、ここではできるんじゃないかなと思いました。」
細井美裕による「余白史」
音が空間の認識をどう変容させるかに焦点を当てた作品制作を行う細井美裕は、公園全体に広がる音声作品「余白史」を制作した。
「これは日比谷公園の音を公的にアーカイブするという、リサーチベースのプロジェクトです。信頼している作家さんや、サウンドエンジニア、庭の研究者の方などに、一ヶ月くらいかけて日比谷公園のいろんなところを録音して頂きました。録音には合計でおそらく50名以上の方々に参加してもらっています。」
長い歴史のある日比谷公園だからこそ、過去の音にはたくさんの種類がある。今回のインスタレーションでは、集めた音とリアルタイムの音を合わせることにより、新たな空間を生み出している。
「今回は公園の園内放送のスピーカーのみを使用することにしました。公園が過去に鳴らしてきた音を、今この瞬間の音と重ねて出せたらいいなと思ったので。今回は園内放送のシステムをお借りして、たまに過去の音が聞こえたり、何も聞こえない時はその時々の音を楽しんだりみたいな、そういう感覚になってもらえたらいいなと思っています。」
ワークショップ
あわせて、期間中は心字池周辺にて、永山祐子氏によるワークショップ「はなの灯籠」も開催される。ここでは光の粒を携えた一輪の花を池に浮かべる体験が可能。日中は彩どりの花が浮かび、夜は光が浮かぶ幻想的な空間を体感できる。
「『はなの灯籠』ワークショップ 」
開催日:4月27日(土)、5月4日(土・祝)、5月11日(土)
時間:9時~22時
「Playground Becomes Dark Slowly」
WEB:www.tokyo-park.or.jp