Maison Margiela|Nighthawk: The 2024 Artisanal Film Premiere

Maison Margiela|Nighthawk: The 2024 Artisanal Film Premiere

Photo: Courtesy of Maison Margiela

「Maison Margiela」は、2024年9月30日(現地時間)にパリ8区シネマ・ル・バルザックにてクリエーティブ・ディレクター、ジョン・ガリアーノによるオリジナルストーリーをベースにしたホラー作品『NIGHTHAWK (ナイトホーク)』を発表。この作品は、2024年1月に発表された2024年「アーティザナル」コレクションの幕開けであった“Would you like to take a walk with me, offline?”(さぁ、オフラインにして、一緒に歩きませんか?)というメッセージから始まる映像を下地に、 映画的な表現を介して詳細に紐解かれ、後世に遺そうと試みである。映像それ自体の雄弁さもさることながら、直接的にはスクリーンに映っていない事柄も利用することによって、静謐な緊張感を獲得している。例えば、キャストのルル・テニーとレオン・デイム、フレデリック・ビットナーは実際に上映会の会場に姿を見せ、映像の物語を四次元展開させている。弦楽四重奏楽団が映像の音楽とシンクロしたライブ演奏も相まって、現実と虚構の境界線を曖昧にさせ、対峙させるというガリアーノの流儀を一層深めている。

『NIGHTHAWK (ナイトホーク)』を手がけたのは、サーシャ・カシューハ。ニューヨークを拠点にする総合芸術家、映画監督として、マドンナやブラックピンクの作品を手がけ、MTV Video Music Awardにもノミネートされた『MADAME X』の共同監督も務めている。

『NIGHTHAWK (ナイトホーク)』はドキュメンタリーとフィクションを映画的に組み合わせたドキュメンタリーフィクション形式として描かれ、オートクチュールという絶対性と架空の物語という相対性を一つに溶け合わすことで、細部が露わになる。その細部というのがガリアーノの個人の意識とアトリエという集合が成した匠の技。フィルムでは部分的にガリアーノがナレーションを務め、彼の身振り手振り、つまりジェスチャーさえも伝わってくることで感情を抑制することなく、インスピレーションやストーリー、実験的なドレスメーキングを回想する。それと同時に、コラボレーターからミューズ、オーディエンスまで、「Maison Margiela」コミュニティーのメンバーも登場する。ショーのメークアップを作り上げたパット・マクグラスが声でカメオ出演する他、2024年に開催されたメットガラにて2024年「アーティザナル」コレクションのルックを着用したキム・ガーダシアンやショーのファイナルルックを纏ったグウェンドリン・クリスティーも出演している。

ショー全体に溢れていたミステリアスな超越性は、オートクチュールの固有性を如実にすると同時にある記号的なエレメントも有していることを証明している。それはガリアーノ自身が構想し、が構想し、2022年の「アーティザナル」コレクションで発表された物語「Cinema Inferno」。物語は作者自身のイマジネーションから生まれたもので、決して断片的なものではなく、コレクションからコレクションへと受け継がれていく。この「Cinema Inferno」で主役を務めたカウントとヘンも引き続き登場(レオン・デイムとルル・テニーは同じ役で出演したミューズ)。「Cinema Inferno」のラストは映画のようなループに陥っていくシーンだったが、上映会場シネマ・ル・バルザックに現れ、現実と仮構の世界が対峙する。それはドレスメーキングの最高峰であるオートクチュールの象徴的な魔法のような力(作者の創造性、アトリエの職人技、観衆の熱狂)の関係性を強調する。それは裏返すと、人の嗜好がデータ化、アルゴリズムによる情報化で決め「られて」しまうことが多い世界に対する抗いとして存在する意義がある。コレクションノートの最初と最後にはこう記されている。

「記録することは、時の中に記憶を記念として残すこと。記憶に留める価値のある出会いを」

「『NIGHTHAWK (ナイトホーク)』はファストファッション・カルチャーへの反発であり、世代やプラットフォームを問わずインスパイアするために生まれてきたものなのです」

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The Review:
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服に封じられた謎、即刻解いてみせます
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The interview
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