「跋」QUOTATION FASHION ISSUE Fashion Director 麥田俊一
跋
いつの頃よりカタチのある生き方とは程遠い生活を経ててしまっていたから、せめて仕事だけはカタチのあるものに整えておきたいと思っているのだけれど、どうも、その方も心許ない。
編集部のS君に云われたところの、オチていた時期が余りにも長かった。これまで自分を鼓舞するために発し続けてきた言葉は、果たして見栄や虚飾だったのか。それは常に、装われた正しさや装われた芸術性、装われた叛逆の反対側に向かっていって、不遜に聞こえるかも知れないけれど、私はそれを格好好いとずっと信じてきた。それはそれで好い。間違ってはない、と私は思う。
だが一方で、言葉の海にドップリと浸る自分免許の芸を、自らおだてると云う陥穽に堕ちていたことを白状しないわけにはいくまい。そんな下直なドグマから救ってくれたのが、同業のジャンルカ・カンターロの丁寧で真摯な言葉だった。私にとって、彼はミステリオーソそのものだった。
ズズッと堕ちるに任せ、すっかり戦意が消え失せようと云う段にあって、ジャーナリストたる彼の意志を私は知り、道を穿つ彼の言葉を私は知った。それは格好の止血剤として効果覿面だった。と同時に、私は記事を書くことの難しさを改めて思い知った。カンターロのインタビューは今号と次号に分載するので、是非とも読んで欲しい。
麥田俊一