tao|tao SS2026 SHOW REVIEW Seeing the elusive figure

tao|tao SS2026 SHOW REVIEW 捉えどころのない カタチを見る

tao SS2026

急速な変化を余儀なくされているこの時代に、美意識は時代の複雑さに呼応しなければならないこともある。それはまた、人間の感性の複雑さを肯定することになり、没価値性を明確に否定することに繋がるという意思表示にもなるはず。慣習に重きを置いたパラダイムに縋るのではなく、ブランドが根本に添えたコアを筋書きの起点とすることで、多元的な豊かさを解し、そこにいくつもの美を結実させ、異なる個性の表出を標榜する。そういった意味では、「tao」の立ち位置は明快であり、今回の2026年春夏にも確りと通底している。

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「らしさ」を紡ぐ足掛かりは心の模様の観察。「tao」を手掛ける栗原たおは、ショーノートに「taoらしい、自分らしい服作りに取り組んだコレクションです。 アーティスト今村文さんによる、花を主題とした作品を生地にプリントすることで、そこから感じる優しさや逞しさを身に纏えたらと思い、制作しました」と寄せている。それは「見る」という本能的なプロセス、「ものの見方」、そして「観察」という行為と「見られるもの」との相関関係、インターベーション(仮構が現実に、現実が仮構に介入)とインベンション(創意工夫)における、特異な視点の顕在化とも捉えることができる。魅惑的な感性とその本質的な価値性をハッキリと象るため、作品群を着地点としながらその過程にもフォーカスすることで、自分自身を見直され、「らしさ」を紐解くというジェスチャーとなる。観察は、古いこと、新しいこと、それぞれの中にある矛盾や複雑性を肯定しながら、見るという行為そのものの不顕な思考の扉のような役割を持っているように感じさせる。

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心の模様だけを忠実に描写するのではなく、現実の風景と密接している。今季でいうならば、現代アーティストである今村 文の作品とそれが重なっている。だからこそ彼女自身の世界に留まった私小説とは違う、ある程度の客観性を保ちながら、心の模様を硬直させず、「可愛い」「ガーリー」「少女性」といった既に潜在化されている感覚や枠組みを流動するものとしている。さもあれば、可愛いは奇妙に見えることもあるし、ガーリーはキッチュに見えることもあるし、少女性は官能的に見えることもある。つまり、心の模様を見つめることは、人の魅力を解き明かすことでもあり得る。入り口が複数ある部屋とか、二つ以上の結末を用意した小説のように、人の魅力は実に多面的である。あるがままの姿と、理想とする姿。それは、記憶や気分によって形成され、常に揺れ動き、際限なく移ろいを見せる。だから、「tao」の服は一枚のフィルターのように現実と仮構の狭間に存在し、様々な横顔が備わっている。

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と同時に、栗原のアイデンティティーは、彼女自身の内で、日々めまぐるしく変化していくこともあるだろう。二次元である筈のものを三次元に、静止した状態が完成形であるとされるものに動きを与え、生き生きとさせることによって、そのもののカタチを大きく変化させる。フリルやギャザーに込めたニュアンスやテクスチャー。バルーンシェイプ。花々を想起させるブラウスやシャツ、ビスチェ。アンティーク調のプリントを施したオーガンジーとそのレイヤリング…作品群の全篇に包み込まれている、際どいある種のスリリングでオプチミスチックな破調の気分に、こちらは唖然としながら、 実はその唖然が快感という場合もある。

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