FEATURE|「PIZZA SLICE」ニューヨークのリアリティを追求

ニューヨークスタイルと呼ばれる大きな三角スライスが特徴のピザと、飲食店の枠にハマらないクリエイティブ性で一躍人気となった「PIZZA SLICE」。
代官山の1号店オープンから13年目の現在についてオーナー猿丸浩基にインタビュー。

「ピザが大好きだった、まずはここが何よりの原点です。」と語るPIZZA SLICE創業者・猿丸浩基。

「ハンバーガーとかカフェとか、飲食店を経営するなら何がいいんだろうって考えていたときに、ピザだなって。中学生の頃、ピザ屋やりたいっていう夢があったこともふと思い出したりして。」

ピザとニューヨークに馳せる思いと、年々広がりを見せる店舗経営。PIZZA SLICEの現在を聞く。

ニューヨークでの出会いから出店まで

――ピザ屋をビジネスと捉えたときの思いとは?

ピザ屋ってデリバリー以外だとお店があまりないんです、それはビジネス的に成り立たないのか、もしくは誰も挑戦してないのか、どちらかかなって思ったんですけど、東京だったら人が多いからもしかしたら成り立つんじゃないかなって。
それでニューヨークに渡って2年くらいピザ作りを習得して、代官山に出店しました。
若さもあって当時は何も深く考えずやっていました。

――NYのピザ修行についてお聞かせください。

ニューヨークに渡ったのは2011年です。
兵庫出身なのですが、大学を卒業してから就職をせずアルバイトで稼いで、とりあえず東京に出てきたのですが、ピザ屋を始めるためにはどこで働くのが一番いいんだろうって考えたときに、いや東京じゃない、ニューヨークだ、ってなって。本当に単純な思いと勢いで渡米を決めました。

しかし行ってみたものの、ワーキングビザを持っているわけではなかったので仕事はできずでした。ピザ屋に通い詰めて居座っているうちに顔馴染みになって、仕事をさせてもらうわけではなかったのですが、そのうちにピザ作りを見せてくれるようになって。いろんなピザ屋に顔を出していたのですが、安いものがバンバンに売れている時代、1ドルピザ屋なんかもありました。ドル安だったので1切れ80円とか。そんな金額設定なのでお客さんの回転もすごく早くて、忙しさの中でこそ見れることも多く、いい勉強させてもらえていました。

ニューヨークのピザクラストって、厚すぎず薄すぎず、クリスピーさもある絶妙なバランスが特徴なんです。これは職人技でしかないですね。それもあってかニューヨークのピザ屋って個人店か小規模チェーンがほとんどでした。

――2年間のニューヨーク生活について教えてください

あの頃はニューヨークがすごく楽しい時代だったと思います。

遊びの延長でよく写真を撮っていたんですが、アメリカではInstagramが既に大人気になっていて。当時日本はfacebookすらまだそこまで普及していなかった。アメリカにいたことでSNSの先取りができて、写真を撮るっていう行為がナチュラルに日常にあった。遊びながら感性に触れるものを撮り集めていきました。

店を一緒に始めた西岡に会うこともできた。これは最大の収穫だったと思います。彼はデザインの勉強でニューヨークに来ていたのですが、近所だったこともあってしょっちゅう会っていました。感性が似ていて、西岡とだったらいい店ができる、そんな気がしていたんです。将来の話もするうちに、東京にピザ屋を出したいと思っているんだけど一緒にやらないかって持ち掛けたら、乗っかってくれた。この店を作るためにあの頃ずっと一緒にいたんだなって今改めて思います。「スタンド式でスライス売り、そんなスタイルのピザ屋があったらいいよね」なんて話をしながら。とても貴重な時間でした。

住んでいる時にしか見えない景色ってあるんですよね。若者としての多感な時期をニューヨークで過ごしたことによって、自分の求めるものや感覚を刺激するものを、当時の流行と重ねてたくさん見つけられた。新しいものを生み出す強いエネルギーを直に感じることができたので、本当にいい時期に行っていたなと思います。

代官山に1号店オープン、その後の多店舗展開に至るまで

――代官山店オープン時の背景や、当時の思い出など教えてください。

日本に戻って、2013年に最初のお店を代官山にオープンさせました。 この物件、長く続くお店がないからやめたほうがいいと不動産屋さんからも言われるほどのところで、そんなことから家賃はリーズナブルだったんです。あともう1つ大きく惹かれたのは天井の高さでした。これだけ高いところは滅多にない、海外っぽさを出すにはここかなと思ったんです。

店舗の内装やイメージにはこだわりました。ニューヨークで見てきた景色や感性に触れたものをそこに活かしたかった。そういう店舗デザインから、店のロゴやWebなどのグラフィックデザインなどのクリエイティブ面は、すべて西岡が仕切ってくれています。アイデアは出し合って、方向性が決まったら後の細かい作業は彼が1人でこなす。彼のクリエイティブセンスには全幅の信頼を置いています。

オープン当初は不動産屋さんの言う通り、全くお客さんは入らない日々でした。1日10人とか、それも自分たちの友達ばかりで、1日の売上は2万円程度。なのにスタッフ4人くらいで回していたので基本的に赤字でしかない。若いからそれでも面白く思えてなんとかやっていましたね。

土地柄的にアパレル系の人の往来があって、雑誌関係の人がうちの店を見つけてくれたことで、撮影場所として貸し始めました。日中の明るい時間は撮影、夕方からピザ屋、そんなスタイルでなんとか切り盛りしていたのですが、これで店が認知される最初のブレイクポイントになりました。

そこにInstagramの普及ですね、これは我々の店にとって大きな波となりました。来てくれたお客さんが写真を撮ってSNSに載せる、それでお店の情報が世間に自然拡散されていく。我々は広報活動ってほぼしていなかった、お客さんが喜んで写真を撮ってくれそうなものを仕掛けとしてお店の中に散りばめただけという。これは内装にきちんと手をかけるという、ニューヨークにいたときに学んだ店作りです。

2010年代頭にやってきた空前のニューヨーク・ブルックリンブーム。フードもファッションもニューヨーク、って世間の流れ、これには後押しされました。そんなタイミングにちょうどお店を始めていて、ニューヨークの生の空気を知っている立場としてはもはやフィットせざるを得ない状況になった。すぐ近くにニューヨークブランドの代名詞的なSUPREMEさんのショップもあったことで、買い物後にピザを食べるという流れが生まれたんです。

あとは代官山に蔦屋書店さんができたのは大きかった。渋谷から代官山まで歩いてきてピザ食べて、夜中まで開いている蔦屋書店さんまで行く、みたいな人たちがたくさんいました。そういう街としての変化にもずいぶん助けられてきましたね。

こう振り返ってみると、偶然やってきた流れにうまく乗ったというだけで、運がよかったとしか言いようがないですね(笑)。

――オープンして13年、現在のPIZZA SLICEについて

現在は6店舗を構えています。代官山、原宿、日本橋、二子玉川、静岡、最近オープンしたばかりのミヤシタパーク。あと韓国にもフランチャイズで1店出しています。正直ここまでの規模になるなんて考えてもいませんでした。

積極的に事業を拡大しようと思っていたわけではなく、「PIZZA SLICE」っていうブランドをいろんな人に知ってもらってピザを楽しんでもらえたらっていう思いでやっていたら店舗数も増えていましたね。

ターゲット層はエリアごとに異なり、ミヤシタであれば高校生などの若い世代がほとんどで、二子玉だとファミリー層で家族を持って渋谷に出なくなった僕たち世代に来てもらいたいっていう思い、原宿はキャットストリートなのでアパレル関係やファッションフリーク、外国人にも来て欲しいお店、静岡は地方都市として初出店になります。客層やエリア特性を考えながらバランスよく展開してければと考えています。 メニューは全店舗ほぼ同じで7、8種類なのですが、自由に動ける部分もあって、各店舗で新しいピザができて評判がよかったら共有して横展開するようなこともしています。

店舗が増えて客層もそれぞれなので、各店舗特性に応じたことを考えないといけないなとは思っています。メニューであったり、店舗デザインであったり、広報的なことであったり。改めて今そうした経営の課題にも直面しているところです。

――PIZZA SLICEの存在とは?

PIZZA SLICE、特に代官山店って、我々の青春、時を切り取ったある種のセルフポートレートのような存在ですね。自分の人生、ニューヨーク時代の思い出の総決算。我々の「ピュア」な感覚がここには詰め込んであって、それって他の店には継承しきれない思いというか、それだけ特別な場所で切なさすら感じることもあります。

再開発の波がすぐそこまで来ているので、あと何年やっていけるのか。仕方ないことではありますけどね。

オープンしてすぐの頃、ご年配のお客さんが「俺も昔ニューヨーク行ってピザ食べたんだよ」って懐かしがって話してくれたことがありました。今来てくれているお客さんにも、その世代になったとき同じように思い出して語ってくれるような場所でありたい。青春時代に初めての彼女と食べたなとか、貧乏だったときによく来たなとか、子どもの頃によく親が連れてきてくれたなとか。おいしい、まずいでは括れないジャンルの店を目指したいと思っています。

ニューヨークブーム的なものは終焉を迎えているので、そのあたりは意識して変える必要性も感じています。また何十年経ったら流行って戻ってくると思うので、それまでしぶとく生き残ってピザ屋をやっていたいですね。

PIZZA SLICE
WEB:https://pizzaslice.jp/
Instagram:@pizza_slice_tokyo



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