FEATURE|24年11月、亀有に「SKAC(SKWAT KAMEARI ART CENTRE)」がオープンした。アートの発信地として瞬く間に注目を浴びているニュースポットを紹介する
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「SKAC」は亀有駅から徒歩10分程度のJR常磐線高架下スペースに位置する。
設計事務所「DAIKEI MILLS」のメンバーを中心として構成されたチーム「SKWAT」による、再開発プロジェクトだ。
1階にはアートブックを取り扱う「twelvebooks」、レコードショップ「VDS(Vinal Delivery Service)」、カフェスペース「TAWKS」、ギャラリー「PARK」が併設され、2階に「DAIKEI MILLS」のオフィスが入っている。
足場も単管も剥き出しの作りは、買い物をする場所というより、作業場・倉庫といった感じが強い。そこに大量の商品が整然と並んでいる姿は圧巻だ。
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「DAIKEI MILLS」代表の中村圭佑が国内外を問わず広く活動している繋がりから、「SKAC」の店舗構成ができたという。グローバルで培われてきた感性が発揮されていることから、海外からの集客もかなり多いという。
中村はロンドン留学時代、「Barbican Centre(バービカンセンター)」に用がなくてもよく足を運んでいたという。時間があったらふらっと立ち寄る場所。そういう、目的がなくてもなんとなく行けるようなところを作りたいとずっと考えていたそうだ。
「SKAC」を構成するエリア
―アートブック専門ディストリビューター「twelvebooks」
1階と2階が「twelvebooks」の倉庫を一般開放したスペースとなっている。世界中から毎月数千冊のアートブックがでここに納品され、仕分けを行い、国内のリテーラーに商品を卸すディストリビューターとしての業務がメインとなる。そして、国内に届いたばかりのアートブックが日本で最初に手に取れるスペースでもある。
全ての本はビニールパッキングされた状態で倉庫にストックされるが、1冊だけは見本としてお客さんが読めるようになっている。ブックストアなどではアートブックの在庫も少ないため、立ち読みすることに躊躇する人もいるのでは。その点ここでは用意された見本があるので思う存分、何冊もの本を手に取ることができるのはありがたい。
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「twelvebooks」の一角には、2014年に閉館した「清里現代美術館」が所蔵していたアーカイブを展示したり、昔のチケットやポストカード、フライヤーといったエフェメラと呼ばれる印刷物が収納されたキャビネットを展開する「ens / 苑ス」による「EPHEMERAL DOCK」も常設で展開している。
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―レコードショップ「VDS(Vinyl Delivery Service)」
亀有とロンドンで展開するレコードショップの「VDS」。国内外から集めた多種多様な中古レコードを取り扱う。ここもショップでありながら、ECサイトでの販売業務も同時に行っている。オーダーが入ると、スタッフは膨大な数の在庫から商品をピックアップし、発送作業を行う。中古のレコードがメインのため基本的には1点ものとなり価格設定もその価値によってさまざまだ。
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ジャンルの分け方が特徴的で、いわゆる音楽カテゴリーやアーティスト名だけではなく、音楽から連想される感覚で仕分けされている。たとえば「ホワイト」「ブルー」といった色であったり、「アース」「ウォーター」「宇宙」など、五大要素から想起される感覚的なワードで分けられている。ここに来るお客さんは、そんなオリジナリティ溢れるコーナーを楽しそうに漁り、4台設置されている試聴用のターンテーブルで思い思いの時間を満喫している。
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幅広いジャンルの新着商品が毎日追加されるため、常に棚の様子が変わっていくとのこと。一期一会の出会いを求めてやってくる人は後を絶たない。
―ギャラリースペース「PARK」+カフェ「TAWKS」
SKWATが独自にキュレーションを行うギャラリー「PARK」の一角に、カフェ「TAWKS」がある。
開放感溢れる空間には、ソファや椅子、建築素材をリユースして作ったテーブルが点在し、ギャラリーに展示されている作品をコーヒーを飲みながらゆっくり楽しむことができる。
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このタイミングでは、「WHEREABOUTS(サインの行方)」というタイトルで、TOKYO ART BOOK FAIRで使われていたサイネージをインスタレーションとして扱った展示を行っていた。
普通なら会期終了後に廃棄されてしまうサイネージだが、そのデザイン力の高さに目を付けたSKWATが、TOKYO ART BOOK FAIRのサインデザインを担当している「centre inc.」と協業しここに持ち込んだそうだ。
作品の設営もSKWATメンバー自ら行う。図面検証などは行うもののあまりそれには頼りきらず、現場で自分たちの勘とそこでの臨場感を大切にしながら、時間をかけて展示レイアウトの調整をしていくという。
テンポラリー展示なので、訪れるたびに新しいアート作品に触れることができる場所になっている。
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「SKAC」に遊びに来たお客さんに「気づいたら3時間も経っていた」「来るとつい長居してしまう」と言われることもあるそうだ。
本・音楽・カフェ・ギャラリーという滞在時間を伸ばすコンテンツを敢えて入れているという「SKWAT」の目論見にまんまとハマってしまう人が続出するこのスペース、ぜひ足を運んでみてほしい。
「SKAC(SKWAT KAMEARI ART CENTRE)」
住所:東京都葛飾区西亀有3-26-4
営業時間:11:00~19:00(月・火曜 定休)
※カフェ「TAWKS」 8:30~18:00 / 土日祝 11:00~18:00(月・火曜 定休)
WEB:https://linktr.ee/SKWAT