イタリアのボローニャで毎年開催される「ボローニャ国際絵本原画展」の最新の全入選作品を一堂に集めた展覧会が、板橋区立美術館にて8月12日(月)まで開催中。世界各国の作品から絵本文化を体感できる、会場内の様子をレポートする。
「ボローニャ国際絵本原画展」は、児童専門書の見本市「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア(BCBF)」が主催するコンクール。世界のイラストレーターたちが入選を目指して制作した作品から、国籍の異なる審査団による選考を経て300名のファイナリストが選出され、最終審査に約80名のイラストレーターが入選する。出版・未出版を問わず応募が可能なため、新人作家の登竜門としても知られている。58回目となる今年は81の国と地域から3,520名の応募があり、日本人4名を含む32の国と地域の78名が入選した。
そして今年の全入選作品が集められた今回の展覧会。会場を入るとすぐ、壁に展示された原画と、その場で手に取って見ることができる絵本が目に入った。
会場はいくつかの展示空間に分けられている。奥の展示エリアに進んでいくと、壁に沿ってたくさんの作品が並んでいた。異なる作家の作品が隣り合わせに展示されており、作風の違いが顕著に見て取れる。どれもしっかりとした世界観を持ち、一点一点見る度に、その物語に吸い込まれるような感覚になった。
絵本を手に取れる場所は会場内にいくつかある。ここにもテーブルと椅子が設置されており、その周りに展示されている原画と絵本を見比べながら鑑賞することができるようになっていた。物語を知ってから原画を観ると、作品に対する理解がさらに深まるように感じる。
今回の展示の中で、印象的だった作品がいくつかある。まず、今まさにプールに飛び込もうとする人々を真正面から捉えた矢部雅子による絵本『テイクユアマークス』。タイトルになっている“テイクユアマークス”とは、“take your marks(=位置について、用意)”の意味。これからレースを始めようとする人々の躍動感のあるポーズや表情に加え、観衆の声援が聞こえてきそうな臨場感がある。
また中国の絵本作家 ウ・ダァ(Da Wu)による『カタツムリを動かさないで』は、日に照らされた芝生の作品もあれば、暗い路地から見たような視点のものもある。対照的である光と影が、それぞれ逆の方向を向く少年たちと重なり、物語への興味を加速させる。
そしてローレン・タマキによるノンフィクション絵本『カメラに映らなかった真実 3人の写真家が見た日系人収容所』。一色に塗られた背景色の上に、黒で描かれた人々のシルエットや表情。真珠湾攻撃によって、アメリカの日系二世が収容所に入れられるようになった当時の重々しい背景が浮かび上がった。
絵本は子供だけのものではなく、大人になって読むからこそ物語の趣旨が理解できたり、登場人物に共感できたりするような魅力を持つ。今回の展示では、実際に子供の頃の記憶を蘇らせてくれたり、未来について考えさせてくれる作品があった。原画とともに、様々な国の絵本を手に取ることができるこの機会、自分の感性に触れるような作品を探してみて欲しい。
「2024 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」
会期:2024年7月2日(火)~8月12日(月・振休)
休館日:月曜日、7月16日(火)※7月15日(月)、8月12日(月)は開館
会場:板橋区立美術館
住所:東京都板橋区赤塚5-34-27
時間:9:30〜17:00 ※入館は16:30まで
観覧料:一般650円、高校・大学生450円、小・中学生200円