EVENT|飯沼英樹の個展「recto verso レクト/ヴェルソ」会場レポート

hpgrp GALLERY TOKYOが「Otherwise Gallery(アザワイズギャラリー)」としてリニューアルオープン。第一弾として、一木造りの木彫作品を制作するアーティスト・飯沼英樹の個展「recto verso レクト/ヴェルソ」が4月13日(土)まで開催されている。今回はその会場をレポートする。

会場を入ってすぐ右側には、今回のメインビジュアルとなっている作品「Jitrois」が展示されていた。一度見たら忘れられないような存在感のある飯沼の作品の数々は、雑誌のモデルたちからインスパイアされているものが多く、力強く一点を見つめる表情はスーパーモデルを彷彿とさせる。

入り口付近に並ぶのは2024年に制作された新作。どれも違う服装、ポーズで、複数並ぶと一層迫力を増し、木彫りであることを忘れさせるくらいの躍動感と独特な雰囲気を放っている。そのファッション性からか、ファッション業界のファンも多いという。

正面はもちろん、その後ろ姿にも注目したい。今回の展示タイトルである「recto verso」には「裏表(うらおもて)」という意味がある。立体ならではの360度見渡せる一木造りの作品は、表と裏の両方を見て楽しむことができる。

厚肉彫りという技法によるレリーフにも挑戦する飯沼。会場奥へ進むと、その作品の数々が壁に沿って展示されている。厚肉彫りとは平面を深く彫り込んで、彫り残された部分が高く突き出ている彫刻のこと。もともとは一枚の板だったとは思えないくらい、立体的な女性像が浮かび上がる。一木造りとはまた一味違った表情を見せる厚肉彫りの作品は、後ろ姿こそ見えないものの、角度を変えて鑑賞するとその高度な技術が見て取れる。

一木造りと厚肉彫り、二つの技法の作品に向き合い、飯沼が気づいたことについて次のように語っている。

「あらゆる角度からみることのできる立体の女性は、鑑賞者の前で全てをさらけ出している。一方、正面が全てのレリーフ女性からは、まるでカメラに見られている部分に意識を集中しているように、『見られたい部分』を演出する。
立体には凛とした、厚肉彫りには隠された(見えない)裏側があるからこその強さが見える。」

側にいる動物たち

ファッショナブルな女性を作品のモチーフとする飯沼だが、その側には鳥や犬、狐といった動物の姿もある。都会的なファッションと、少しチグハグに見える動物たちとのコンビネションは愛らしさがあり、その世界観をより強くする。

「なぜ私は人を彫るのか。
現代という時間を纏いながら、人間の根源的な生命力、エネルギー、
事故を主張する女性の姿を捉えたいという欲求が絶えない。
「recto verso」には「裏表(うらおもて)」という意味のほかに「両面」という意味もある。
目に見える存在と、うちに秘めた力。
全てを解放することで多面的な魅力を放つ立像と、隠すことでより強い美を感じさせるレリーフ。
そのどちらの強さにも魅力を感じているから、私は女性像を彫る。」

飯沼 英樹 プロフィール:
1975年長野県生まれ。2002年愛知県立芸術大学大学院修了後、ナント国立美術大学に入学し、2006年までヨーロッパ各地を拠点に活動する。帰国後は、「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2013」(兵庫)、「LUMINE meets ART AWARD 2015」への参加や、2016年には美術館個展「戦ウ女神タチ」(松本市美術館)を開催。現代を生きる女性たちからインスピレーションを受けた木彫作品を発表し、流行のファッションに身を包む女性たちの葛藤や強さ、美しさを表現している。彫刻は木肌が見えるほどのラフな外形を持ち、しばしば街中や自然など実際の社会を背景に撮影するなど、現代の女性たちのリアルな「いま」を感じられる作風が特徴。作品の主な所蔵先として、松本市美術館(長野県)、タグチアートコレクション、エルンスト・バルラハ美術館(ドイツ)、ケラバ美術館(フィンランド)、ヴィギリウス・マウンテンリゾート(イタリア)などがある。

飯沼英樹個展「recto verso レクト/ヴェルソ」
会期:2024年3月18日(月)〜4月13日(土)
会場:Otherwise Gallery 住所:東京都港区南青山5-7-17 小原流会館 B1F
時間:12:00〜19:00
休廊日:日・月・火曜日

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