SHIBUYA SCRAMBLE SQUARE|SKY GALLERY EXHIBITION SERIES vol.7「Ding-dong, ding-dong ~Bells ringing at the bottom of the valley~」の会場をレポート

「渋谷スクランブルスクエア」の展望施設「SHIBUYA SKY」の46階にある「SKY GALLERY」では、「SKY GALLERY EXHIBITION SERIES」として企画展が定期的に開催されている。「視点を拡げる」を共通テーマに、アーティストが体験した本施設のインスピレーションをもとに制作された作品が展開されるこの企画展シリーズ。7回目となる今回は、美術家・中﨑透による企画展「Ding-dong, ding- dong 〜Bells ringing at the bottom of the valley〜」が3月31日(日)まで開催中。今回はその会場をレポートする。

中﨑透

渋谷の街が見渡せる会場で、中﨑透による企画展「Ding-dong, ding- dong 〜Bells ringing at the bottom of the valley〜」は開催されている。SHIBUYA SKYで定期的に開催している本格的な企画展「SKY GALLERY EXHIBITION SERIES」のVol.7として開催される本展では、この街と深く関わり合いながら独自の人生を歩む3人へのインタビューをもとに作り上げられた作品が、作家の新作とともに公開されている。

一つ一つ並べられてた作品の横には、インタビューから抜粋されたテキストが並ぶ。鮮やかな色彩の看板やデニムパンツ、工事現場を思わせる機材、赤や黄色、緑のカラーコーンなど、生活の中で誰しもが見かけるようなアイテムが作品に落とし込まれた。
インタビュー対象は、ベルボトム専門店の店主、都市開発に従事した男性、街を闊歩しつつテクノ音楽をこよなく愛する女性といった、渋谷にゆかりのある3人。彼らの言葉をモチーフに一つの物語を紡いだ作品が展示されており、それぞれの人生のストーリーが中﨑の作品を通して交差する。

左:原宿にある古着屋CHICAGOをモチーフにした作品
右:ベルボトム専門店DEE★DEE(ディーディー)オーナー所蔵のベルボトム

“言葉”と“イメージ”の「ズレ」をテーマにしたユニークな看板作品をはじめ、多くの人を巻き込みながらプロセス自体を作品化したプロジェクト型の作品を制作してきた中﨑らしく、本展でも作品に込められた想いやそこから受けるイメージと、渋谷という街との「ズレ」を個々に感じられるような展示となっている。

インタビューから抜粋されたテキストの他に、作品の説明書きなどは記されていない。その一文を読んで3人のうちの誰の言葉であるのかを想像し作品と併せ見ることで、個人の想いや過去の一部を切り取った情景が目に浮かぶようだ。

窓ガラスに印字されたインタビューのテキスト

70年代のミュージックビジュアルをモチーフにした作品

1973年に開業した渋谷PARCOをモチーフにした作品

現在も再開発が進む渋谷の街は、長い年月をかけて大きく変貌を遂げてきた。渋谷駅前のスクランブル交差点の地下にある「しぶちか」は1957年に誕生し、2021年に大改装を経て生まれ変わった。また駅前のボウリング場「シブヤボウリング」は1965年に開業した老舗で、現在では渋谷駅周辺で唯一のボウリング場となっている。見た目が変わってもそこにあり続け、人々に愛される代表的な存在が作品のモチーフとなった。

会場内には大きなモニターを使った作品も

背景と重なり、まるで空に伸びていくかのように見える階段をメインにした作品

中﨑透 / NAKAZAKI プロフィール:
1976年茨城生まれ。美術家。武蔵野美術大学大学院造形研究科博士後期課程満期単位取得退学。現在、茨城県水戶市を拠点に活動。言葉やイメージといった共通認識の中に生じるズレをテーマに自然体でゆるやかな手法を使って、看板をモチーフとした作品をはじめ、パフォーマンス、映像、インス タレーションなど、形式を特定せず制作を展開している。展覧会多数。2006年末より「Nadegata Instant Party」を結成し、ユニットとしても活動。2007年末より「遊戯室(中﨑透+遠藤水城)」を設立し、運営に携わる(-2021)。2011 年よりプロジェクトFUKUSHIMA!に参加、主に美術部門のディレクションを担当。2022年、越後妻有大地の芸術祭参加、水戸芸術館にて個展「中﨑透 フィクション・トラベラー」開催。2023年、芸術選奨新人賞受賞。
公式サイト:http://nakazakitohru.com/

SKY GALLERY EXHIBITION SERIES vol.7「Ding-dong, ding-dong ~Bells ringing at the bottom of the valley~」
インフォメーション

茨城県水戸市を拠点とする美術家の中﨑透は、“言葉”と“イメージ”の「ズレ」をテーマにしたユニークな看板作品をはじめ、多くの人を巻き込みながらプロセス自体を作品化したプロジェクト型の作品など、活動が多岐にわたることで知られている。中﨑はここ数年ほど、その土地/地域や建物に所縁ある人々を取材したインタビューを基点にし、紡いだ言葉とともに空間を構成したツアー型のインスタレーション作品のシリーズを全国各地で展開している。

今回の展示において中﨑は、渋谷という街に深く関わりながら独自の人生を歩む、年齢や性別、職業の全く異なる三人のインタビューを実施。決して交わり合う事の無かった三つの人生が、中﨑の新作を中心とした作品群と共に紡がれている。鑑賞者はこの舞台に散りばめられた断片を通して、ここSHIBUYA SKYの上空から見下ろす街のイメージとのズレ、自らの今や人生との差異に触れながら、社会と個人の間にある影響の密接さを感じる展示となっている。

会期:2024年1月23日(火)~3月31日(日)
場所:SHIBUYA SKY 46階「SKY GALLERY」
住所:東京都渋谷区渋谷2-24-12 渋谷スクランブルスクエア
特設サイト:https://www.shibuya-scramble-square.com/sky/exhibition_nakazaki_tohru/

インタビュイー:
津田幸英(オリジナルベルボトム専門店DEE★DEE 店主)
筒井香菜(モデル)

協力:
小川誠治、コスモプラネタリウム渋谷、津田幸英(オリジナルベルボトム専門店DEE★DEE 店主)、株式会社 植村会館 植村写真スタジオ、筒井香菜(モデル)、東急プロパティマネジメント株式会社、株式会社渋谷マークシティ、坂野雅(株式会社ARIGATO-CHAN)、東急株式会社

制作協力:
グラフィックデザイン:長嶋りかこ(village®️)
施工:乃村工藝社、Artifact、津田翔平、早川祐太、加藤亮
映像制作:Artifact、元木龍也

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