BALENCIAGA|BALENCIAGA BY DEMNA EXHIBITION

Photo: Courtesy of Balenciaga
「BALENCIAGA」のクリエイティブ・ディレクターであるデムナが2025年7月9日の54th Couture Showを前に、自らキュレーションを手掛け、2015 年から 2025 年までメゾンで過ごした 10 年間の軌跡を振り返るレジ ュメ展覧会が、パリ 7 区セーヴル通り 40 番地にある歴史的な Laennec のランドマーク内、ケリング本社で開催。パリメンズ期間中に開催されたプレスプレビューには、デムナを始め、長年タッグを組んできたセドリック・シャルビ元CEO(現「SAINT LAURENT」CEO)、デムナのパートナーであり、作曲家兼ミュージシャン、ロイック・ゴメス、ファーストルックやラストルックなど大事なルックのモデルを務めたエリザ・ダグラスなどデムナの親交のある人物や次期クリエイティブ・ディレクター、ピエールパオロ・ピッチョーリなども来場した。

Photo: Courtesy of Balenciaga
メゾンにおける最後のプレタポルテコレクションとなった Spring 26 コレクションである、デムナによる Balenciaga「Exactitudes」を発展させた本展は、彼の作品を特徴づけるデザインコード、ボリューム、シルエット、そしてアティテュードを体現。「隠す」「覆う」というワードはデムナの創作のラストタッチに大きく影響してきたが、本展は間近で、しかも360度包み隠すことなく露わにしている。断片の全貌を見るにこの仕事における緊張感と彼の集中力が服に宿っている。

Photo: Courtesy of Balenciaga
本展は、「BALENCIAGA」のコレクションへの招待状として使用されたオブジェクトの数々から始まり、デムナ自身が厳選した 101 点の展示が続く。パリの Palais Galliera ファッション美術館から貸し出された 2 点も含まれている。これらの展示は、10 年間にわたる 30ものコレクションからの、アンサンブルや個別のガーメント、アクセサリー、フットウェアで構成されている。可能な範囲で多角的に見せる背景には、デムナという人物の影響力…つまり世界中からそこに集まった才能が総合力となり、このメゾンの礎の一つとなったことを現している。
デムナがメゾンに在籍していた期間における主要な概念的、テーマ的特徴を探求する本展では、様々な展示がされている。創業者、クリストバル・バレンシアガのコードの再解釈、プロポーションの探求、「レディメイド」の研究、トロンプルイユ、アップサイクル、ファッションの既成ルールの再考、そして現代ワードローブへの継続的な考察: 人々は何を着て、どのように着こなすのか、そしてファッションとラグジュアリーの微妙な境界線はどこにあるのか。

Photo: Courtesy of Balenciaga
展示品のうち50点にはオーディオシステムが備え付けられており、デムナによる専用のナレーションを通して、それぞれの作品に込められた意味と創作プロセスへの洞察を提供している。それは鑑賞者の声とのミックスになることでBGMのようでなりながら、耳を傾けてみるとデムナの声がする…それは展示されているガーメントの細部を覗いてみると…という仕草と呼応する。
展示品は、特製の台や専用ディスプレイに展示されており、特製マネキンや、実際にそのアンサンブルを着用したモデルのハイパーリアリスティックなスカルプチャー、ドライクリーニング店風のハンガー、そしてガーメントとそのインスピレーションの源となったアーカイブスタイルを並べて展示する両面架台などが含まれる。

Photo: Courtesy of Balenciaga
一部の展示品は、「BALENCIAGA」の「Art in Stores」プロジェクトに参加したアーティストとのコラボレーションにより、アート作品として展示されている。例えば、Summer 22「Red Carpet」コレクション・プレゼンテーションでデムナが着用したクロージングルックが、米国人アーティスト、Mark Jenkinsによって再解釈され、彼のシグネチャーの一つであるヒューマノイドスカルプチャーとなっている。さらに、厳選された6種のシューズとアクセサリーが、Andrew J. Greeneの「Timeless Symbols」シリーズの作品と融合し、ステンレススチールの支柱の上に設置され、内蔵モーターによって回転。
高級ファッション雑誌風にデザインされたカタログには、展示作品の画像に加え、この雑誌のために特別に制作されたビジュアルが掲載されている。

Photo: Courtesy of Balenciaga
本日7月9日19:00(日本時間)、デムナの最後のコレクションである54th Coutureが発表される。そこで最後に何を書き記すのか。本展は、最後の言葉を迎える前の穏やかな回想である。会場で友人たちと談笑するデムナ本人の表情が穏やかだったように、彼のこのメゾンでの時間は価値を示す時間と言語を刻んでいる。