Courrèges|FW2023-24キャンペーン。現代人固有の姿勢と古典的な神聖な姿勢は、幻想的な輝きを放つことで、象徴的なジェスチャーとなる
Photo: David Sims
光や霞、空の色や気配といった自然そのものに宿る時間の流れと現代のデジタルデバイスに生活が左右される時間の流れ。スマートフォンの無機質な光は暗闇の中で人の仕草を照らす。スクリーンに気を取られ、身体が丸く帯びる姿勢と呼応するように曲線的で滑らかなフォルムは、ニコラス・デ・フェリーチェ手がける「クレージュ」2023-24年秋冬コレクションの特徴の一つ。長年のコラボレーターである英国の写真家、デヴィッド・シムズが撮り下ろしたビジュアルでは、現代人固有の仕草だけではなくルネッサンス期のマドンナの神聖な姿勢を彷彿とさせ、デ・フェリーチェの思い描く世界はこれまでブランドが築いてきた儀式的な物語の文脈と今という現実を交差させる。3月のパリウィメンズにて発表したランウェイショーの先にあるホスティックなムードを漂わせている。
Photo: David Sims
ジェスチャーは精緻に照明によって幻想的な輝きを放ち、輪郭が浮き彫りとなる
メゾンのアイコニックな存在とされているロリ・バイヤ、モナ・トゥガード、ジェマ・ワードといった優雅で気品あるミューズたちは、別の世界線を辿るように、存在感と彩りを附与する。本キャンペーンに纏わるノートには「象徴的な手のジェスチャーは古典的図像学の規範をレファレンスとし、巧みに組まれた照明がシルエットをまるで夢のような輝きで包み込み、放物線を描く真鍮のペンダントの鏡面はまるで心の窓のように歪みを映し出します」とも。