FEATURE|アートをテーマにしたラグジュアリーホテル「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」

2016年7月に東京ガーデンテラス紀尾井町にオープンしたラグジュアリーホテル「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」。地上約180メートルの窓からは、まるでフレームで切り取られた絵画のような美しい風景を眺めることができる。館内には日本人アーティストの作品が展示され、ホテルのコンシェルジュによる宿泊者限定の「アートツアー」も開催されている。ホテル名に「ギャラリー」と名付け、アートをテーマにすることで、ラグジュアリーホテルとしての豪華さに加え、視覚的な美しさや文化的価値、滞在体験の向上、そして他のホテルとの差別化を実現している。コンシェルジュの佐伯 舞に話を聞いた。

コンシェルジュ 佐伯 舞

――ホテルの名前を「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」としたのは、なぜでしょうか?

ホテルのコンセプトとして「Levitation(浮揚感)」と「Framed Kaleidoscopic View(額縁で切り取った万華鏡のような景色)」があります。インテリア、デザイン、ホテル館内に展示されているアート作品、そしてサービスなどを通して、美術館を訪れたときのような高揚感「浮揚感」を感じていただきたいという想いを、ホテル名の“ギャラリー”という名前に込めました。周辺に高い建物が少なく、地上約180mに位置する客室の窓から広がる景色は「切り取った景色(フレーム)」として額縁に収まったアートのように体感していただくこともできます。また、ギャラリーには人が集うという意味もあるとのことで、人が集まる場所であってほしいという想いもあります。かつて大名家が屋敷を構えたことが地名の由来でもある「東京・紀尾井町」という場所だからこその歴史と伝統、そして周辺の自然風景もアートの要素として溶け込んでいるのではないかと考えております。

――こちらのホテルで企画されているアートツアーとはどのようなツアーですか?コンシェルジュの方が担当されているようですが。

現在私を含め6名のコンシェルジュで、主に海外のお客様のご旅行のサポートをさせていただいております。ホテルのご案内はもちろん、レストランのご予約や、京都など地方にご旅行に行かれる方には、新幹線のチケットの手配、宿泊のご予約、お買い物などお客様の様々なお手伝いをさせていただいております。当ホテルは観光の拠点として、泊まるだけでなく、ホテルにお越しいただくことも目的にしており、ご宿泊者様向けの体験型コンテンツ「GALLERY EXPERIENCE」を拡充しております。そのエクスペリエンスのひとつとしてアートツアーを実施しております。ホテルの2階から36階まで各所にあるアート作品を20-30分ほどかけてコンシェルジュがご案内いたします。館内にはレセプションにはじまり、バーの壁面、エレベーターホール、廊下、レストランなどパブリックスペースの他、客室内、スパやラウンジなどにアートを展示しております。展示作品は五十嵐威暢さんや、野口真里さんなどすべて日本人の作家さんたちによるものです。

35F Sky Gallery Lounge Levita
野口真里「黎明の泉」
30-36F Elevator Lobbies
客室内
デザイナーズ スイート(100㎡)

同じ敷地内にある「東京ガーデンテラス紀尾井町」にも、大巻伸嗣さんや名和晃平さんなど8作家によるパブリックアートがありますので、ツアーではそちらも一緒にご紹介させていただいております。参加される皆様には作家と作品名、基本的なコンセプトはお伝えするのですが、あとはゆっくり見ていただく時間を設けて自由に館内、敷地内のアートを観賞していただきます。

「東京ガーデンテラス紀尾井町」内パブリックアート
Echoes Infinity ~Immortal Flowers~ 大巻伸嗣
「東京ガーデンテラス紀尾井町」内パブリックアート
White Deer 名和 晃平

――なぜ、日本人のアーティスト作品なのでしょうか?

日本人ならではのおもてなし、日本の良さを伝えたいという思いが根幹にあります。海外の方には日本のホテルに来たからには、日本ならではの体験をしていただきたいと思っております。客室には浴衣とパジャマの2種類をご用意しておりますし、急須も南部鉄器を置いています。そういった点で日本人のアーティストの作品をセレクトさせていただき、世界中のお客様に伝えていけたらいいと考えております。有名無名に関係なく未来に向けた若いアーティストの作品もセレクトしております。またアートだけではなく、お茶の体験だったり、着物の着付けであったり、日本酒の飲み比べとかお寿司の食べ方など日本だからこそ体験できるようなエクスペリエンスをご提案させていただいております。

――ホテル全体のデザインはどこが手掛けたのでしょうか?

プリンスホテルは国内では広く認知されているのですが、当ホテルはグループ全体のフラッグシップホテルであり、オープンにあたってはホテルとしてグローバルな規模の会社に成長していきたい、世界にもプリンスホテルをもっと知ってもらいたいという思いもあり、初めて海外の有名なデザイン会社、ロックウェル・グループ・ヨーロッパに依頼をしました。ロックウェル・グループは海外の会社なので日本の文化や歴史、地理などを非常に勉強されたようで、周りに遮るものがない、美しい景色を最高の形で見せたいということでデザインのコンセプト等が決まったようです。カラーとしてはダークオレンジ色がキーカラーになっており、ソファーや廊下の一部ではアクセント的にダークオレンジ色が使われています。

――オープンしてからホテルのお客様の反応はいかがでしょうか?

ホテル内にアートが展示されているのを知らずにお越しいただくお客様もいらっしゃいますし、アートが好きだからと当ホテルを選んでいただけるお客様もいらっしゃるようです。レストランに食事で来られた方が、ロビーに展示されているアート作品を見てギャラリーかと思いましたとおっしゃる方もいらっしゃいました。アートがお客様と私たちをつなぐ役割になっているとも感じています。アートを通して世界各地のお客様に当ホテルを知っていただくきっかけになり、また繰り返し来ていただくツールになっているのだと思います。

アートを少しでも知っていただけたらということでアートツアーを開催しているのですが、ご興味のあるお客様にはホテル内のアート、パブリックアート、東京ガーデンテラス紀尾井町内にあるアート作品すべてを解説付きで見ることができるデジタルアートブックのQRコードをご案内しております。それがとても好評でこれからも活用して参りたいと思っております。
個人としては日頃から美術館に行ったり、アートの勉強をしてはいるのですが、私よりもアートに対する造詣が深いお客様もいらっしゃって、まだまだ勉強をしないといけないなと感じております。

「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」館内の様子

――佐伯さん個人としてアートの楽しみとはなんでしょうか?

私もまだまだ初心者ですが、作品によっていろんな解釈ができるのが魅力だなと思っています。私が個人的に感じたことと他の方とでは見方や感じ方は違うでしょうし。ただ、そういう解釈が何万通りもあるのがアートの魅力だと思います。いろいろな意味を持っていますし、見ていて飽きることがありません。それがとても面白いです。いつ、どこで見るかによっても変わってきます。お客様目線で言いますと、本日宿泊されて感じることと、また何年後かでは違うと思いますし、ホテルの窓からの景色も時間の流れで変わっていきます。アートは時間や気持ちに寄り添ってどんどん変わっていくものなのではないでしょうか。毎回違う風景やアートをこのホテルでは体感していただけると思います。

――今後の展開としては

ホテルの基本コンセプトや常設的なアート作品は変わらないですが、「紀尾井町」にゆかりのある紀州・和歌山県の魅力をお届けするコラボレーションフェアとしてロビーで和歌山県のアーティストの方たちの作品展を開催したこともあります。それがとても好評でしたので、今後も企画展は開催していきたいと考えています。最近ですと、5月にはバラをテーマにしたローズウィークの中でローズのアートを展示しました。また、絶景が広がるホテルのバーの壁面に夏は「花火」、秋は「紅葉」のデジタルアートを投影するなど様々な企画を予定しております。

ホテルのオープン以来、私たちが伝えたい「Levitation(浮揚感)」と「切り取った景色(フレーム)」というコンセプトはお客様のSNSなどから少しずつ伝わっているようで、それが私たちの自信になり、間違っていなかった、これからも頑張ろうという励みになっております。私たちやお客様の想いを未来に繋げていくことを「Connect to your future」をコンセプトに、新しい企画や過ごし方をご提案していきたいです。

ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町:

2016年にオープンしたラグジュアリーホテル。地上約180mの都心の眺望とともに豊かな自然とアートを感じさせるデザイン、先進の機能を高度に融合させた「プリンスホテル」の最上級ホテルであり、マリオット・インターナショナルのラグジュアリーコレクションに加盟している。

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