LA MUSEUM | Margiela at Villa in the Forest 2025.5.31 / LA MUSEUM SHIBUYA 2025.6.14〜29

LA MUSEUM | Margiela at Villa in the Forest 2025.5.31 / LA MUSEUM SHIBUYA 2025.6.14〜29

Photo: Takashi Homma / Courtesy of LAILA Co., Ltd.

2024年7月にオープンしたLAILAが手掛けるオンラインミュージアムLA MUSEUMが5月31日(土)に一日限定で同ミュージアム初となる フィジカルエキシビション『Margiela at Villa in the Forest』を開催。妹島和世建築設計事務所が設計した長野県茅野市にある「森の別荘」で、 1989年〜1999年に発表された「Maison Martin Margiela」の作品を展示。往時のコレクションだけではなく、貴重なスケッチブックの閲覧や映像作品の上映も行なった。

Photo: Courtesy of LAILA Co., Ltd.

2002年に創業されたヴィンテージショップLAILAは歴史が培ってきた様々なファッションデザインの収集・保管を続け、シーズンの傾向やドレンドに左右されない独自の編集を行い、提案を続けてきた。そのアーカイブされた作品を、オンラインミュージアムLA MUSEUMにてキュレーション、展示している。今回は、現在公開中のセカンドエキシビジョン『1950s – 2010s Part 2』で展示している「Maison Martin Margiela」の作品の中から、1989年~1999年に発表された合計12体を展示。1993年春夏コレクション、及び1993-94年秋冬コレクションの制作過程を記した貴重なスケッチブック合計2冊が閲覧できるだけでなく、2021年10月にフランス・パリの美術館Lafayette Anticipationsで発表された映像作品も上映された。

Photo: Courtesy of LAILA Co., Ltd.

過去、現在、未来問わず、ファッションはデザイナーの「視座」と「自我」の結実であるといえる。特にパリには偉大なアーカイブを擁するメゾンとデザイナーの形跡が数多あり、それが文化、概念、言語に根付いている。今を生きるデザイナーは先達が残した歴史と文化と対峙しなければならない。その街が擁護してきた規範とデザイナーの独自性との葛藤が、程度の差こそあれ、生じるはずである。受動的に影響を受けてしまうことを警戒しすぎるあまり、その格式が微塵も表現されない場合もあるだろう。それが文脈として継承された形跡が必ずどこかにあるはず。いつ、どこで、誰が、何を、どのように。そのような手がかりは洋服とそれに付随する文献や史料から読み取ることができる。

Photo: Courtesy of LAILA Co., Ltd.

先述した歴史や文化と対峙するのは何もデザイナーだけではない。LA MUSEUMのように、収集、保管、編集、そしてキュレーションを通して加速する現代(デジタルデバイス)との共生を今この瞬間を以って、未来に紡ごうとするアティチュードがある。それは氾濫するアーカイブに縋るコミュニティーとは一線を画す。オリジナルな価値を据えて、現代に対して問いかける。あらゆる選択肢を設けることで、人は解答(成果)を問われる。

本展にて、公開されたスケッチブックには「Maison Martin Margiela」の1993年春夏と1993-94年秋冬の制作過程における、工場とのやりとりがスケッチと仕様指示が記されていた。細かいサイジングが明記されている箇所もあれば、大まかにのみ殴り書きされたような仕様まで多種多様な指示書になっているが、生産者とメゾンの間にはどのようなやりとりがされていたのか、そして生まれた服の細部にはどのような物語が凝縮されているのだろうか。はたまた映像作品にはマルタン・マルジェラの初期の創作から散見されるウィッグをキーモチーフとしながら時折、シュールな場面転換がされたごく数分の映像からは、彼の意識と視点について考えさせられる。それらの稀少性を重んじながらも、それを受けてどのように未来に紡いでいくか、それはLA MUSEUMを運営するLAILAだけではなく、それに触れる者の命題といっても大げさではない。アーカイブなど過去やデジタルを味方につけた現代問わず、歴史や文化に触れる行為というのはそれ相応の責任と覚悟が必要だということを改めて銘記されるよう。

Photo: Courtesy of LAILA Co., Ltd.

LA MUSEUMでは、『Margiela at Villa in the Forest』に続き、東京・渋谷にて『LA MUSEUM SHIBUYA』と題した展覧会を開催する。そこでは、オンラインで開催しているセカンドエキシビジョン『1950s – 2010s Part 2 History of Modern Fashion Design』から約50体を展示。ヴィヴィアン・ウエストウッドやマルコム・マクラーレンを中心とした英国・ロンドンで誕生したパンクスタイル、同時期に世界を席巻し始めた三宅一生、髙田賢三、川久保玲、山本耀司といった日本人デザイナーたち、マルタン・マルジェラなど、ベルギー・アントワープが生んだファッションデザインの数々をキュレーションしているだけでなく、ヘルムート・ラングやジョン・ガリアーノ、アレキサンダー・マックイーンの作品などが並ぶ。

Photo: Courtesy of LAILA Co., Ltd.

また、『STREET』『FRUiTS』『TUNE』などの編集者としても知られているフォトグラファー、青木正一が1989年10月19日にパリで撮影した、「Maison Martin Margiela」1990年春夏コレクションのランウェイや会場周辺のドキュメンタリー写真をスライドショー形式にて会場内にて上映。同コレクションで発表されたものの中から、ランウェイとほぼ同様のスタイリングのまま合計7ルックを展示する。

Photo: Courtesy of LAILA Co., Ltd.

さらに、2006年パリ8区グラン・パレで開催された展覧会『La Force de L’Art – Grand Palais 2006』にて発表された、「Maison Martin Margiela」による215枚にも及ぶ写真インスタレーション作品を日本初展示致します。2006年の展覧会以降、一度も日の目を見たことのない、マルジェラ自身による貴重なアート作品となっている。

Photo: Courtesy of LAILA Co., Ltd.

アーカイブの希少性を目撃して鼻高々になるわけでも、スマートフォンに残しSNSにあげるためではない、痕跡を型取り、その型を時代と照らしながら、未来を接続する。それは時を超えた問いかけでもあり、現代ファッションが希求する自発性への示唆となっている。

LA MUSEUM SHIBUYA

会期 2025年6月14日(土)~29日(日)
時間 12:00~19:00
会場 LA MUSEUM SHIBUYA特設スペース 住所 東京都渋谷区2-12-24 東建・長井ビルB1F 入場料 無料

※来場前にLA MUSEUMアプリをダウンロードし、 スマートフォン上の同画面を入場時に提示

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QUOTATION FASHION ISSUE vol.41

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