JUN TAKAHASHI|高橋盾が香港での初の個展「Peaceable Kingdom」を開催

JUN TAKAHASHI|高橋盾が香港での初の個展「Peaceable Kingdom」を開催

WKM Galleryは2024年10月25日から12月14日の期間、高橋 盾の香港での初の個展「Peaceable Kingdom」を開催。「UNDERCOVER」を手がける高橋は、ファッションでの創作と並行して、10年以上絵画を描き続けてきており、2023年に初めてその作品を発表。今回の展示では30年に渡るクリエーションの源流である、陰鬱でシュルレアリスチックな世界をより深く見詰めることができる。展示される作品は全て新作となっており、2024年6月のパリメンズファッションウイークにてランウェイショー形式で発表された2025年春夏メンズコレクションのモチーフとなった3点のキャンバス作品も初めて公開される。現代の混沌とした世界と、アーチストの深い平和への願いの間にある葛藤が描かれる「Peaceable Kingdom」は、高橋のこれまでで最大規模かつ日本国外で初めての大規模展となる。

Jun Takahashi, Lonely Man, 2024, Oil on canvas, 100 x 100 x 4.5 cm, 39 37/100 x 39 37/100 x 1 77/100 in, (JT_0009). Courtesy of the artist and WKM Gallery.

「Peaceable Kingdom」は、高橋が無秩序と調和の間にある緊張関係を追求し続けてきたことと並列となっている。高橋の創作の本質的な着想源であり、創造における理解者とも呼べるパティ・スミスの同名の曲に触発された本展では、空想風景の中に描かれた歪んだ肖像や抽象化された人物像、林檎や雲といったモチーフが点在し繰り返し描かれている。赤い水たまりに溶け込み、空間に浮かびあるいは消えていくように描かれた林檎は、純真 さと衰退の複雑に絡み合った性質を象徴し、雲は展示全体に沁みゆくような希望の余韻を生み出している。

Jun Takahashi, Room of abandonment, 2024, Oil on canvas, 100 x 100 x 2.5 cm, 39 37/100 x 39 37/100 x 49/50 in, (JT_0011). Courtesy of the artist and WKM Gallery.

これらのモチーフは、高橋の映画的な人物画作品にも登場する。高橋の人物画には精神的苦悩や実存的恐怖というテーマが投影されたディストピア的なフィクションや不気味なシーンが参照されたものもあれば、日常生活の中の個人的で親密な側面からもたらされたサブカルチャー的参照のなされたものもある。2016年から取り入れられた目を失った影のような特徴的なモチーフ は、匿名性を暗示させ、自らの文化的文脈を超えた普遍性を有しています。人物像から目を消す行為を高橋は「その人物の『視点』を吸収し、自らの一部として反映する方法」と語っているようだが、同時にそれは、高橋が惹かれている不完全さや、未完成で断片的なものから生まれる美しさも映し出しているのかもしれない。

《Room of contemplation》や《Room of abandonment》といった作品には、高橋のオリジナルキャラクターである「ピンクマン」が登場。実存に苦しむ顔のない魂であるピンクマンは、 目のない人物画とは対照的に、抽象的で象徴的な形で人間の感情を純粋に表現している。控えめなカラーパレットで描かれた陰鬱としたイメージの中に描かれた雲や青空の一部は、感情的な重さを持つ作品に一時の安らぎを与え、混沌の中にもきっと存在する平和を暗示している。ピンクマンは寒色寄りのトーンで描かれた「Future Days」の3部作にも、人型の動物の姿や神秘的なシンボルのコラージュと共に登場している。この展示で最もシュルレアリスチックで抽象的なこの3作品は、2025年春夏メンズのショーで生地のプリントとして初めて発表され、今回の展覧会でそのオリジナルキャンバスが初めて公開される。その両方に深い繋がりを持つ者だけが可能とするギャラリースペースとランウェイの間での対話は、高橋の創造性がジャンル の境界を越えて一つのものとして存在していることを示している。

Jun Takahashi, Future Days, 2024, Oil on canvas, Framed, 48.6 x 41 x 6.7 cm, 19 13/100 x 16 7/50 x 2 16/25 in, (JT_0002). Courtesy of the artist and WKM Gallery.


高橋の日本国外での初の個展は、絵画との関わりを深める彼の姿を映し出すものであると同時に、 今日のファッションとアート界で最も影響力のある人物の実践の根底にある、緻密に作り上げられた世界を覗き見る機会でもある。何十年にも渡って美とグロテスクの境界を曖昧にしてきた高橋は、この展覧会を通して人間の精神に対する深い探求の継続を証明している。高橋があらゆる創作を通して捉えようとしているのは、暴力と苦しみ、ロマンスと陶酔、平和と喜びといった、複雑で切り離せない人間経験の本質そのものなのだろう。

Jun Takahashi, Poison Apples, 2024, Oil on canvas, 162 x 130 x 4.5 cm, 63 39/50 x 51 9/50 x 1 77/100 in, (JT_0008). Courtesy of the artist and WKM Gallery.

展覧会詳細

JUN TAKAHASHI「Peaceable Kingdom 」

WKM Gallery
期間: 2024年10月25日–12月14日

営業日: 火〜土、11am – 7pm

日・月・祝日 休廊

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